賃貸契約で多発する「原状回復費用」トラブル。借主の負担はどこまでが正しい?

賃貸契約において退去時のトラブルが依然として数が多く、今もなお多発しています。その中でも、最も多い割合を占めているのが「原状回復費用」に関するトラブル(全国消費生活情報ネットワーク・システム調べ)。

 

「退去時に高額な費用を請求された」「敷金が一切返ってこない」といったような、退去時の原状回復費用についての相談が後を絶えません。

 

そもそも、原状回復費用とは何なのか。また、借主の負担はどこまでが正しいのか。

賃貸契約数が増加している今こそ、退去時のトラブルを回避する方法を見ていきましょう。

 

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「敷金」と「原状回復」の定義を知る

賃貸契約の際に、初期費用として知られている敷金ですが、敷金の役割を知らずに支払っている方も多いはず。賃貸契約では、自分自身が当事者となるため、「敷金」と「原状回復」の定義や意味について知っておくことが大切です。

 

敷金とは、入居するタイミングで貸主に預けるお金のこといい、最近では敷金ゼロ物件も増えているものの一般的には家賃の1~2ヵ月分が相場となっています。

役割としては、家賃の滞納時や部屋の修繕時に必要だと“認識”されていますが、実は敷金の役割は今まで明確に決められていませんでした。

 

これが原因となり、貸主と借主の意見が分かれトラブルになってしまうケースがありました。

しかし、2017年5月26日に民法が120年ぶりに改定され「貸主は賃貸借契約の終了時に借主へ敷金を原則的に返還しなければならない」という義務が生まれました。

 

つまり、貸主は家賃滞納など借主の金銭債務の場合は敷金から差し引けるものの、“敷金は原状回復費用に使うもの”とは主張できなくなります。

 

また、原状回復についても明確な範囲が今まで決められていませんでしたが、民法の改正によって「生活していく中で生まれる畳や壁紙などの経年劣化による汚れは原状回復の範囲に含まれない」と規定されることに。

わかりやすく説明すると、太陽光による日焼けで黄ばんだ壁紙は経年劣化として原状回復の範囲に含まれず、タバコの喫煙による壁紙の黄ばみは借主の責任として原状回復の範囲に含まれるということです。

 

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トラブル回避のためにチェックリストは必需品

先ほどお伝えしたように、民法の改正によって原則的に敷金は返還される規定が生まれたものの、経年劣化による証拠が無ければ借主の原因にされてしまう可能性もあります。そこで、トラブル回避のためにも「チェックリストの作成」をオススメします。

 

入居するタイミングで、あらかじめ設備ごとの確認を当事者立会いのもと行いチェックリストを作成しておくことにより、退去時の「経年劣化」という証拠になります。

参考として『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』にある「入退去時の物件状況および原状回復確認リスト」のご確認を。

 

めんどくさい作業かもしれませんが、チェックリストは退去時の強い味方になってくれるので必ず作成しておきたいところ。

 

原状回復の負担範囲を相談する

 

原状回復についても同じく、当事者間で「どこまでの範囲を経年劣化として扱うのか」という相談が欠かせない。中には、ほとんどの割合を借主負担に設定する貸主もいるため、相談なしで入居するとトラブルの原因になりかねません。

 

こちらもガイドラインに細かい修繕分担表の参考例があるので、活用して原状回復費用のトラブルに合わないようにしておきましょう。

「修繕分担表のサンプル」

 

まとめ

民法の改正によって借主には助かる制度となりましたが、まだまだ世間には改正の認知度が広まっていません。そのため、これからも敷金や原状回復に関するトラブルが起こることも予想されます。

 

そこで大切になるのが、入退去時のチェックリストの作成や原状回復の負担範囲に関する相談です。手間はかかるものの、自分の身を守るためにも取り入れるようにしてくださいね。